前歯が欠けた、折れた、前歯破折の治療
前歯が欠けた、前歯が折れた、前歯が破折した治療法
歯が欠けた、折れたり、するのは、転んだ、ぶつけたなどの転倒接触事故(外傷)が原因となることがほとんどです。
歯に大きな力がかかると歯やその周辺組織にダメージをうけます。そしてその症状は
- 歯がぐらぐらする。ひびく。(歯根膜の損傷:歯の靱帯)
- 歯の端が小さくかける。(歯の損傷)
- 歯冠が大きく折れる。(歯の損傷)
- 歯がしみる。(神経の損傷)
- 歯の神経が死んで変色する(神経の損傷)
- 歯が抜ける、脱臼する。(歯根膜の損傷:歯の靱帯)
- 歯を支えている骨が骨折する、(骨の損傷)
- 歯肉から出血(歯肉の損傷)
といった事が起きます。
歯根膜、骨、歯肉の損傷は治癒します。
神経の損傷は炎症度合いが低ければ治癒し、ある一定以上の炎症になると収まらず、神経が壊死します。
歯の損傷は戻りません。接着処置もしくは、歯科材料での修復が必要になります。
前歯が欠けた、折れた、前歯をぶつけた方へ
歯の外傷(欠けた、折れた、ぶつけた)は大きく揺れたり、大きく腫れたり、出血をともなったり、ぶつけたばかりは症状が大きくでるため、一般的に歯科医師の診断と処置がおおげさになる傾向があります。特に歯をぶつけてすぐに神経を取る傾向が強いです。その歯の残せるか、その神経を残せるかは、歯科医師の技術力も大きく関係しますが、歯を抜く、神経を抜くなどの後戻りができない処置は急がずに、消炎処置(動揺を固定する、腫れをおさめる、出血をとめる、痛みをなくす)をして、落ち着いてから診断し治療法を決定すべきです。
そして、接着処置や神経を取る処置はとてもデリケートな作業で最初の処置がとても大切です。あわてずに落ち着いて対処してください。
※当院では、歯を保存する事、歯の神経を保存する事に最善を尽くしております。前歯を大きく折ってしまった、前歯が折れて神経が露出してしまった、前歯の差し歯を歯根ごと折れてしまった時は是非ご相談ください。
歯をぶつけて、歯根が抜けてしまって間もない患者さんへ
緊急事態です。
ぶつけて抜け落ちた歯に対して、元の位置にもどす(再植)という治療法があります。この治療が成功するか、抜け落ちた歯の周りの組織(歯根膜)細胞の状態に左右されます。抜けてからの時間が短く、抜け落ちた歯の保存状態がよければ、歯は再び定着します。抜けてから数時間も経過したり抜け落ちた歯を乾燥させたりすると再植しても定着せず上手くいきません。
いち早く、担当もしくは最寄の歯科医院でに行き「ぶつけて、歯根が抜け落ちた」と伝えください。そして、抜けた歯は生理食塩水などで洗い奇麗な状態にして抜けた場所に戻せるのであれば、そっと戻して負荷をかけないで歯科医院に行ってください。歯が折れたりして、抜けた場所に戻せない場合は、生理食塩水(ない場合は牛乳につけるかお口の中に入れる)につけて保管してください。できる限り、抜け落ちた歯の歯根面(歯根膜)を乾燥させないでください。
歯科医院では、もとあった位置に正確に戻し、その位置に固定させるようにします。
歯をぶつけて、前歯を折ってしまって間もない患者さんへ
折ってしまった、破折片を探して下さい。その破折片を再度接着して戻す事ができるかもしれません。破折片がきちんと戻せれば、シンプルな処置で審美回復と機能回復が期待できます。失くさないように、大切に歯科医院にお持ちください。
前歯が欠けた、折れたりした際の7つの治療法
歯冠部が破折して、破折片がない時
①コンポジットレジン修復
利点
治療回数も1回で済み、健康保健対応なので治療費は安価である
欠点
接着面積が狭いので、確実な強度がとれない。⇒噛む力にたえきれず取れる可能性がある。
コンポジットレジンはセラミックのような色調再現性が乏しい
コンポジットレジンが劣化し長期的には変色してしまう、接着部分がはがれ着色する⇒長期的審美性の問題
歯が欠けた際のコンポジットレジン治療のポイント
コンポジットレジンはどうしても経年的な変色着色があるので、コンポジットレジン修復部分が広がらないように無駄に歯を削らないのがポイント。 着色は境界部に起きやすいので、マイクロスコープなどを用いて拡大視野下でできるだけ適合よく修復し、滑沢に研磨するのが大切。 マイクロフィラー含有の最新のコンポジットレジンを用いることで、変色は起きずらく、色調再現性良くなります。
歯冠部が破折して、破折片がある時
②破損片の接着修復
破折片を歯科用接着剤を用いて接着修復する方法。
利点
しっかりと接着する事で、審美的回復と機能回復が見込める。
治療がシンプルで、治療費は自費治療であるが安価である。
(当院の場合 1本10,000円)
欠点
接着強度の予知ができない。⇒噛む力にたえきれずいつどこで脱落するかわからない。
破折片の戻りが悪いと、しっかりとした接着が期待できない。
破折片が複数であると、しっかりした接着ができない。戻せない場合もある。
破折片を接着してその後脱落した場合の再接着は確実な接着が期待できない。
前歯が欠けた際の接着治療のポイント
前歯の折れた欠片を適合良よく戻れば戻るほど長期的に維持します。前歯が複雑に折れてしまっていると戻せない場合があります。 一番最初の接着が鍵です。マイクロスコープなどで拡大視野で適合よく戻す事が重要です。
参考ページ→前歯のよくある悩み14症例で解説
歯冠部が破折して 破折がやや大きい時、
③ラミネートベニア修復法
歯の表面だけを削りセラミックを接着させる方法(ラミネートベニア法)
利点
高いレベルでの審美回復が可能。
天然歯に比べても着色が少なく、長期的に審美性を維持できる
削る量が少なくて済むため、歯自体を保存できる
欠点
削除量が少ない分、もともとの歯の色調に影響をうけやすい
⇒重度の変色歯に対して完全な色調の回復には不向きである
神経の取った歯には基本的は変色を起こすので、基本的に行わない
機械的な強度はやや劣る。⇒⇒折れた欠損部が大きい場合はできない
前歯がかけた(欠けた)際のラミネートベニヤ治療のポイント
長期的にラミネートベニヤを保つには歯の表層部のエナメル質にセラミックを接着する必要があります。そのため、歯を削る量には限界があり、形態の変更には限界があり、変色が強い歯は適応できない場合もあります。 ラミネートベニヤの一番の特徴は、歯の表面に薄いセラミックを張り付ける事で、透明感のある自然な美しさが再現できます。
歯冠が破折して 破折部は大きいが神経は露出していない時、
④セラミッククラウン修復法
歯全集を削り、セラミックをかぶせる方法
利点
高いレベルでの審美回復が可能。
天然歯に比べても着色が少なく、長期的に審美性を維持できる。
機械的強度が十分あたえられ、歯を補強できる。
変色した歯でも審美回復できる。
。
欠点
ラミネートベニアより歯を削る量は多い。
前歯がかけた(欠けた)際のセラミッククラウン治療のポイント
審美回復する上で、歯の変色状態を考えて歯の削除量をコントロールする事が綺麗なセラミックを作るのに重要です。クラウンの境目が見えないように歯肉の下まで歯を削りこむ事で生えた様な自然なクラウンになります。 長期に維持するには適合の良いセラミッククラウンが必要です。そのため、シリコーン印象材を用いてしっかり印象取る事がポイントです。 歯科医師は勿論、歯科技工士の腕が仕上がりを左右します。
歯冠破折 破折が大きく神経が露出し消炎ができない時、
もしくは、神経を取っている歯が歯冠で折れた時
根管治療を行った後、⑤ダウエルポスト(土台)+セラミッククラウン修復法
歯の神経の処置後、ファイバー樹脂を用いて歯自体を補強してセラミックをかぶせる方法
利点
高いレベルでの審美回復が可能
神経を取る処置となった際はダウエルポスト(ファイバー&樹脂)で補強をおこなう 変色した歯でも審美回復ができる
歯を全集クラウンで覆う事で歯の補強が行える。
欠点
神経が露出してしまうと、神経に炎症が起きやすくなる。消炎できない時、神経を取る必要がある
歯を全集削る必要がある。
前歯がかけた(欠けた)際のダウエルポスト+セラミッククラウン治療のポイント
破折に対する強度を獲得するために、ポストをある程度深く長く入れる。ポストをしっかり接着させる事で感染根管のリスクも回避できます。接着作業がとてもデリケートな行程なのでマイクロスコープで拡大視野で行うのがポイントです。
歯根破折 破折線が歯肉より下あり、歯根はしっかり残っている時
根管治療を行った後、
⑥歯周外科処置(クラウンレングスニング)を行い
ダウエルポスト(土台)+セラミッククラウン修復法
歯の神経の処置後、埋まっている歯根を歯周外科手術を行い歯肉の調整を行って、 ファイバー樹脂を用いて歯自体を補強してセラミックをかぶせる方法
利点
残された歯根を抜くことなく活用できる 歯周外科+ファイバー樹脂(土台)処置を行う事で取れにくく、脱離しにくいクラウンを入れることができる
欠点
埋まっている歯根を掘り起こすために、歯周外科処置が必要で、その結果歯冠が長くなる
前歯がかけた(欠けた)際の歯周外科(クラウンレングスニング)治療のポイント
クラウンが脱落しない様に、残存歯質を最低1.5㎜以上は獲得していく必要があります。この1,5ミリがあるかないかが長期的成功には大きなポイントとなります。
歯根破折 破折線が歯肉よりかなり下あり、歯根はしっかり残っている時
根管治療を行った後、
⑦エクストルージョン法(矯正的挺出)を行い、クラウンレングス(歯周外科)
ダウエルポスト(土台)+セラミッククラウン修復法
歯の神経の処置後、埋まっている歯根を矯正で引っ張り上げ、歯周外科手術で歯肉の調整を行って、ファイバー樹脂を用いて歯自体を補強してセラミックをかぶせる方法
利点
残された歯根を抜くことなく活用できる
歯周外科+ファイバー樹脂(土台)処置を行う事で取れにくく、脱離しにくいクラウンが装着できる
矯正処置を行って、歯周外科処置を行う結果、歯冠の長さは適正にコントロールできる
欠点
矯正処置で歯根を牽引するため治療時間がかかる
矯正処置で歯根を引っ張るため、結果的に歯を支える歯根が短くなる。
1、術前の状態 前歯をぶつけて差し歯が脱離して同時に歯根が折れてしまった。 歯根には破折線(ひび)が認められたが炎症はなく、破折線に接着材を流し保存する事とした。(図1の状態)
2、2本の前歯に矯正用の仮歯を装着して、右の前歯をゴムで牽引して矯正的延出を行っ手いる状態の表側と裏側。
(図2の状態)
3、右の前歯が矯正的挺出が終了した状態。歯を引っ張りあげることで歯肉も一緒に上がってくる。(図3の状態)
4、歯周外科処置を行って歯肉を切除して下げた状態。(図4の状態)
5、ファイバー樹脂の土台を入れて歯を補強した状態。(図5の状態)
6、前歯2本にオールセラミッククラウンを装着した状態。(図6の状態)
前歯がかけた(欠けた)際のエクストルージョン治療のポイント
矯正後の後戻りがないように、ある一定期間は保定します。 クラウンが脱落しない様に、残存歯質を最低1.5㎜は獲得する事が長期的成功にはとても大切です。
参考ページ→前歯差し歯の歯根が割れる、保存治療編
前歯のセラミッククラウンが欠けた際の治療法
セラミッククラウンの破折
コンポジットレジンリペア修復法
セラミックの破折部をコンポジットレジン接着させる方法
利点
セラミッククラウンを壊さないで済む
1回の治療で済む
欠点
接着境界部に着色が起こりやすい
コンポジットレジン自体が変色をおこしやすい
コンポジットレジンが脱落する恐れがある
コンポジットレジンの色調再現性に限界がある
参考症例 『前歯のセラミッククラウンがかけた部位にコンポジットレジンにてリペアした症例』
治療前
治療後
破折の診断を行う、歯科用CT
破折片の接着には欠かせないマイクロスコープ
歯髄の閉鎖に欠かせない、MTAセメント
エド日本橋歯科 前歯破折歯治療への取り組み
当院では、2003年の開業当初から、外傷(夜間歩行中の転倒、自転車での転倒事故、交通事故、海外旅行中での事故、スポーツ中の打撲、中高年の咀嚼破折など)で前歯を折る、かける、抜けるなどの症例を特化して治療してきました。
今まで500症例以上手掛け、すべての症例で治療前、治療中、治療後の予後の記録を残し、破折した歯をいかに歯を削らず、神経を取らずに、低侵襲で治せるかを追究してきました。
露出した神経を侵襲なく殺菌消毒するこLEDレーザー
現在では、マイクロスコープ、CT、レーザー、MTAセメント、PDT(光線力学療法)などの精密機器、最先端材料を用いて、歯の保存を第一にあらゆる可能性を考えて、より確実に、より綺麗に、より永く(長持ち)、より無駄なく(無駄に歯を削る事なく)、前歯の破折治療を行っております。